どんなに鳴いても届かない〜「５２ヘルツのクジラたち」を読んで

２０２１年本屋大賞をとった」「５２ヘルツのクジラたち」を読んだ。

以前、本屋に行った時に、あちこちに置いてあったので気になっていたもの。

可愛い装丁も気に入ったので、早速読んでみた。。

実際、その装丁のイメージとは真逆の内容で、親に虐待された女性が大人になって、同じ様に虐待されている少年と出会う物語だ。。

他のクジラには聞き取れない高い周波数で鳴くクジラ。その周波数は５２ヘルツ。

周りにはたくさんの仲間がいて、みんな鳴き声でお互いを確認し合ってるのに、５２ヘルツのクジラはどんなに鳴いても、相手に届くことはない。

そんなクジラの存在が自分と重なり、主人公はいつもこの声を聴いている。

ここに登場する主人公の両親や、少年の母親は、信じがたいほどの酷い行為や暴言を吐く。

本当に、こんな人が世の中にいるのだろうか、と心が苦しくなった。

でも、いるんだろうな。。。

主人公は、義父に殴られる。その痛みよりも実の母親がわかっていて何も助けてくれない事のほうが傷つく。

いつか、母親は昔の母親（義父と出会う前の優しい母親）に戻ってくれるんじゃないか？

私にやさしくしてくれるようになるのではないか？

そんな、期待を心のどこかに持ちながら、そんな事には絶対にならないという、あきらめも持っている。

子供はみな母親を愛している。だからこそ、母親にされる行為が一番傷つく。

「お母さん、お母さん」と心の中で何度も呼んでもかなわない。

自分の声など、誰にも届かないんだ。。

こんなに近くにいても。。。

寂しいね。

寂しすぎる。。

家庭の中での出来事は、外からは手を出しにくい。

もしかしてと思っても、なかなか自分からは行動を起こしにくいものだ。

でも、この主人公と少年を助け出すキーマンは、第三者だ。

やっぱり第三者の介入はとても重要だと心から思った。

今でも、５２ヘルツのクジラのように、声にならない声を発してる人がいるだろう。

そして、この本を読んだ誰もが、助けられるのであれば助けたいと思ったはず。。。

もし、そんな場面に遭遇したら。。。

私達にできる事ってなんだろう。。。

そう考えさせられる本だった。

そしてもうひとつ、こんな酷い事をしてしまう母親って。。。

我が子を殴って傷つける事は、同時に自分も傷つく行為だと思う。

でも、もう自分の力では抜け出せなくなっているのだろうな。。。

だからこそ、ここにも第三者の介入が必要なのかもしれません。

人によって評価は様々だろうけれど、とても良い本でした。

また読み返してみようと思った。

辛いけど、光がある。

そして、手を差し出し助ける事も大切だけど、人は誰もが自分の人生を歩んでいける強さを持っていることを、忘れてはならないと思った。

読み終わってからクジラの鳴き声をネットで聴いてみました。

哺乳類らしい声だった。はじめて聴いた。

どこか惹きつけられる鳴き声で、しばらくクジラがお気に入になりそうです。